コラム

ミシンの歴史と進化|現代の高機能ミシンはここがすごい!

2024年12月20日14時28分

ミシンが初めて日本に来たのはいつか、知っていますか? 実は黒船の2度目の来航時、幕府への献上品の中にあったそうです。現代では各家庭に普及したミシンは、意外なところからもたらされた機械だったのですね。

ミシンの歴史は18世紀のヨーロッパまでさかのぼります。ミシンはどのようにして誕生し、どんな進化を遂げてきたのでしょうか。

今回はミシンの歴史を紐解きながら、現代の高性能ミシンの性能の高さを確認していきましょう。

ミシンの誕生と初期の歴史

ミシンの原型になった機械は、イギリスで生まれたものです。もっとも、開発当初は布を縫い合わせることが目的ではありませんでした。

まずはミシンの誕生と初期の歴史を見ていきましょう。

参考

「ミシン技術の系統化調査」江端美和

コトバンク「ミシン」

1-1. ミシンの原点

ミシンのもととなった機械は、1589年、イギリスで誕生しました。妻が靴下を編むのを見たウィリアム・リーが、鎖縫いのための機械を考案したのです。しかしこれは、内職として一般化していた編み物の仕事を奪うものとして、普及しませんでした。

1790年、この機会を改良して革製品の縫製に活用しようとしたのが、イギリスのトーマス・セイントです。彼が作った機械は最初のミシンとして特許も取得されましたが、実用化には至りませんでした。

1-2. 産業革命時代の進化

18世紀、イギリスは産業革命の時代に突入します。産業革命のきっかけとなったのは、糸紡ぎと機織りの機械化です。工場で大量に商品を作成できるようになったことが、産業を大きく発展させたのです。

この場期には、裁縫の機械化へのニーズも高まりました。1825年にはフランスのバルテルミー・ティモニエが鎖縫い式のミシンを完成させ、1841年には81台のミシンが軍服の仕立てに使用されています。

しかしまだ、ミシンは一般的には普及しませんでした。縫合技術の水準が、社会に受け入れられるまでには至らなかったのです。ミシンの技術が発展し、縫製工場で稼動され始めたのは、19世紀後半になってからでした。

1846年エリアス・ハウが、布押さえや送り装置のついた手回し式本縫いミシンの特許を獲得しました。しかしこのミシンは、当時広まっていた職人たちによる反対運動にあい、工場で稼働することはなかったと言われます。

その後、1851年にアイザック・メリット・シンガーが家庭用のミシンを開発し、それが広く受け入れられたことで、ようやくミシンが一般化したのです。

1-3. シンガーの登場で家庭用ミシンが普及

シンガーは、ミシン製造・販売会杜「I・M・Singer社」を創立しました。シンガー社は現在も続く、ミシン製造の老舗企業です。

シンガーは家庭の女性たちに向けたプロモーションに力を入れました。当時高価だったミシンの購入に「割賦販売方式」という分割支払いを取り入れたのも、シンガーです。

こうした手法が成功し、ミシンは一般家庭になくてはならない道具となっていきました。

ミシンの進化と機能の多様化

20世紀に入り、ミシンは電動化とともに大きく進化します。自動化やコンピューター制御の導入で、より使いやすく、より多機能な道具へと変化したのです。

次はミシンの深化と多様化した機能を見ていきましょう。

2-1. 手動式から電動式へ

1900年代初頭、それまでの足踏み式から、電動モーターを搭載したミシンが登場しました。手や足の力に頼っていた動力が電気に置き換わることで、縫製作業は大きく変化します。安定した速度での縫製が可能になり、作業効率が飛躍的に向上したのです。

日本でも大量生産によって安価な衣類が手に入るようになるまでは、家族の服は家庭で作られるのが一般的でした。手縫いからミシンに置き換わることで、服作りの負担が飛躍的に軽くなったのです。

こうした時代、一定のスピードで正確に縫えるようになったミシンは、ますます身近なものになっていきました。1950年、最初のお年玉付き年賀状の特賞には、ミシンが採用されています。

2-2. 自動化の進化

1970年代以降には、さまざまな自動機能が搭載されたモデルが出てきました。それまで手作業が必要だった糸切や糸調子をあわせる工程が、ボタンひとつで行えるようになったのです。

また、ボタンホールも簡単に作成できるようになり、家庭での洋裁技術はさらに向上していきました。初心者でも手軽に本格的な裁縫ができるようになり、趣味としての裁縫を楽しむ人も増えていきました。

2-3. コンピューターミシンの登場

1980年代に入ると、ミシンはコンピューターの時代となりました。複雑な刺繍パターンを自動で縫い出す刺繍機能や、多様な縫い模様を制御する縫製機能が搭載されたのです。

また液晶画面を搭載した機種も登場しました。画面上で縫い方の手順を確認したり、設定を視覚的に操作したりできるモデルが広まり、ミシンはさらに使いやすくなりました。

すでに衣類を手作りする家庭は少なくなっていましたが、縫製は楽しみとして、社会に留まり続けました。一から手作りする人だけでなく、子どもの服に名前を刺繍するなど、ちょっとしたリメイクにもミシンを使う人が増えるのもこのころです。時代の変化や人々の趣向にあわせ、ミシンはより身近に、より使いやすく進化を遂げてきました。

現代の高機能ミシンはここがすごい!

最新のミシンでは、驚くような高機能を搭載したモデルが出てきました。プロ顔負けの仕上がりを手軽に実現する、高機能ミシンを紹介します。

3-1. 多機能化でプロ仕様の仕上がり

コンピューターミシンが得意な技法といえば、刺繍や縫いです。裁縫は苦手でも、自分の持ち物を少しだけアレンジしたいときに活躍します。子どもの持ち物に名前をつけたり、好きなキャラクターを刺繍したりするときにも便利な機能です。

刺繍機能

手縫いだと時間も技術も必要な刺繍も、ミシンならあっという間です。登録されているデザインから好みのものを選び、ボタン操作だけで本格的な刺繍が完成します。

自分好みのデザインから楽しみたい人は、USBメモリに対応したモデルがオススメです。パソコンで作成したオリジナルデザインを取り込んで、ミシンがイメージどおりの刺繍を施してくれますよ。

縫い模様の多様性

高機能なミシンには、数百種類以上の縫い模様が内蔵されています。直線縫いやジグザグ縫いといった基本的な模様から華やかな装飾模様まで、ボタンひとつで自由に選択可能です。飾りのステッチも思いのままです。

趣味の小物作りから本格的な洋裁まで、あらゆる創作ニーズに応えてくれます。

3-2. 自動化の徹底

糸通しや糸調子の調整などの複雑なミシンの調整も、自動機能に置き換わりました。生地に合わせた最適な設定まで、ミシンが自動で設定してくれます。

自動糸通し・自動糸調子

糸を通したり、調子を合わせたりする作業は、初心者にとって大きな壁です。なかなかうまくいかず、嫌になってしまうこともありますよね。自動機能のついたミシンなら、こうした作業も簡単です。

自動糸通し機能は、細かい針穴への糸通しがワンタッチで完了します。また自動糸調子機能では、最適な糸の張り具合を自動で調整してくれます。

自動生地検知機能

生地の厚さや種類も、ミシンを使ううえでは重要な要素のひとつ。糸の張り具合や速度に注意しないと、縫い目が歪んでしまうかもしれません。

そんなとき、自動生地検知機能があれば安心です。薄手のシフォンから厚手のデニムまで、生地の特性を自動で見分けて最適な設定に調整してくれます。

好きな生地で作品を作れて、楽しみが広がりますよ。

3-3. 静音性と省エネ性能

「ミシンはうるさい」「夜は使えない…」と悩んでいる人もいますよね。最近のミシンは、昔のイメージとはまったく違います。夜間でも使用できる静音設計になっているので、騒音を気にせず、いつでも使うことができますよ。

また環境に配慮した省エネ設計も、現代のミシンの特徴です。待機電力を抑えたり、効率的なモーター制御によって消費電力を低減したりしています。エコモデルを使えば、環境にもお財布にも優しい縫製作業が可能です。

3-4. スマート機能の搭載

ミシンの深化は続いています。スマートフォンと連携したアプリでの操作や、AIによるサポート機能など、最新テクノロジーを見ていきましょう。

Wi-Fi接続対応モデル

最新のミシンには、スマートフォンやタブレットと連携できるWi-Fi機能が搭載されているものがあります。専用アプリを使えば、デザインの作成や編集をスマートフォンで手軽に行えるタイプです。

またミシン本体の操作もアプリから可能で、より直感的な作業が可能になりました。

AIサポート

ミシンが便利になった現代でも、困ったときにすぐ聞けるサポートがあると安心ですよね。最新式のミシンでは、人工知能による新しいサポート機能が登場してきました。

縫い方ガイダンスやトラブルが発生した際の解決方法を、AIがリアルタイムにサポートしてくれます。

まとめ

初期の手動式ミシンから、現在の高機能スマートミシンまで、ミシンは驚くべき進化を続けてきました。自動化や機能性、使いやすさが向上し、家庭だけでなく、プロの現場でも活躍しています。

ミシンの進化は生活を豊かにする大きな力です。わたしたちの身近な道具であるミシンは、時代にあわせ、これからも深化を続けていくことでしょう。

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