ミシンでスムーズに作業するための糸の選び方

縫い目が乱れたり、糸が切れたり、布が絡んだり。ミシン作業中のトラブルは、ストレスの元ですよね。これらのトラブルは、糸選びが原因かもしれません。ミシンは扱う布の素材や厚みによって、適した糸が違います。また糸の素材によっても、仕上がりには大きな違いが生まれるのです。
適切な糸を選ぶとミシン作業がスムーズに進み、作品も美しく仕上がります。今回はそれぞれの糸の特徴や、布地に合った選び方のポイントを詳しく見ていきましょう。
ミシン糸の基本知識
ミシン糸は、素材や太さによって特徴が大きく異なります。用途に合った、適切な糸を選びましょう。
まずは代表的な糸の種類と、特徴をまとめました。
1. 糸の種類と特徴
糸は生地と同じように、さまざまな素材や太さのものがあります。糸を選ぶときは色だけでなく、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
ミシンでよく使われる糸は、以下のものです。
ポリエステル糸
ポリエステル糸は、現代の縫製に広く使われている一般的な縫製用糸です。強度が高く伸縮性があるので、さまざまな布地に対応します。洗濯にも強く、色落ちも少ないため、普段着やバッグなど、頻繁に洗濯や使用する作品に最適です。
特に一般的な木綿やポリエステル生地との相性が良く、初心者の方にも使いやすい糸です。
綿糸
綿糸は自然素材ならではの優しい風合いが特徴です。薄手のコットンやリネンなどの天然素材の縫製に使用されます。
吸湿性が高くアイロンの熱にも強いため、肌着や赤ちゃんの衣類など、デリケートな肌に触れる作品に向いています。ただし、伸縮性が少なく強度もポリエステル糸より劣るため、厚手の生地や激しい動きに対応する衣類には不向きです。
レジロン糸
レジロン糸は、高い伸縮性と強度を併せ持つ特殊糸です。ストレッチ素材やスポーツウェアなど、伸縮性のある生地の縫製に使われます。
生地が伸びても糸が切れにくく、運動時の動きにも対応できるのが特徴です。反対に一般的な布地には過剰な伸縮性となることもあります。用途を限定して使用しましょう。
ウーリー糸
ウーリー糸は、伸縮性のある生地専用に開発された糸です。主にロックミシンでの縫製に使用されます。
縫い目に程よい伸縮性を持たせることができ、Tシャツやカットソーなどのニット製品の縫製に欠かせません。縫い目が波打つようなトラブルを防ぎ、着心地の良い仕上がりを実現します。
絹糸
絹糸は上質な光沢と滑らかな肌触りが特徴で、高級衣料やドレスなどの縫製に使用されます。手縫いでは和裁にも使用される糸です。
繊細な生地との相性が良く、美しい縫い目を作ることができます。一方で他の糸に比べて強度が低く、取り扱いにも注意が必要です。また価格も高めなので、特別な作品に使用することが多い糸です。
特殊糸
特殊糸には、刺繍糸やラメ糸、メタリック糸などがあります。これらは主に装飾目的で使用され、作品に華やかさや個性を添えることができます。通常の縫製用糸より繊細で切れやすい傾向があるため、ミシンの設定や縫製速度に特に注意が必要です。
2.糸の太さ(番手)について
ミシン糸の太さは「番手(ばんて)」という単位で表されます。これは糸の太さを数値化したもので、縫製する布地の厚さや用途によって適切な番手を選ぶ必要があります。
基本的には、布地が薄ければ細い糸(番手が大きい)を、厚ければ太い糸(番手が小さい)を選びます。
30番
30番は太めの糸で、デニムやキャンバス、厚手のコートなど、丈夫さが求められる作品に使用します。縫い目がしっかりと目立つため、デザインのアクセントとしても活用できる太さです。
ジーンズのステッチや、バッグの縫製などでよく見かける太めの縫い目は、この30番台の糸で縫われています。
60番
60番は最も一般的な太さで、日常的な洋服作りに適しています。薄手から中厚手まで幅広い生地に対応でき、縫い目も自然な太さに仕上がります。ブラウスやスカート、普段着のズボンなど、様々な作品に使用できる万能な太さです。
使い勝手が良く、手芸店で最も多く取り扱われている糸でもあります。
90番以上
90番以上の細い糸は、シフォンやオーガンジーなどの薄地、あるいは絹物の縫製に使用します。繊細な生地を傷めることなく、目立たない縫い目を作ることができるのが特徴です。
またレースやチュールなどのデリケートな素材を扱う際にも重宝します。
ただし細い糸は切れやすいため、ミシンの設定には特に注意が必要です。
糸選びのポイント
糸選びは、作品の仕上がりを左右する重要なポイントです。用途に合った適切な糸を選ぶことで、縫製作業がスムーズになり、美しい仕上がりを実現できます。
1.布に合った糸を選ぶ
糸選びの基本は、生地と同じ素材を選ぶことです。綿素材の布には綿糸、ポリエステル生地にはポリエステル糸というように素材を合わせると、洗濯や着用時の収縮率も同じになり、縫い目が歪むリスクを減らすことができます。
布地の厚さや密度によっても、適切な糸が異なります。デニムやキャンバスなどの厚手の生地には、太めのポリエステル糸が適しています。一方薄手のブラウス生地には細めの糸を選び、縫い目を目立たせないようにすると良いでしょう。
また伸縮性のある生地にはレジロン糸など専用の糸を使用することで、着用時の糸切れを防ぐことができます。
2.ミシン針との相性を確認する
糸とミシン針の相性は、縫製作業の成否を決める重要な要素です。糸が針穴に対して太すぎると通過時の摩擦で糸が傷み、糸切れの原因となります。逆に針が太すぎると、布地に必要以上に大きな穴が開いてしまい、縫い目が乱れてしまいます。
番手に応じたミシン針を使いましょう。特にメタリック糸や刺繍糸などの特殊糸を使用する場合は、専用の針も用意されていることもあります。針を使い分けることで、作品がより美しく、丈夫にしあがります。
3.仕上がりのイメージに合わせる
作品の用途や好みに応じて、糸の特性を活かした選び方をすることも大切です。自然な風合いを重視する場合は、綿糸が適しています。また光沢のある上品な仕上がりを求める場合は、ポリエステル糸や絹糸がおすすめです。
デザインのアクセントとして縫い目を見せたい場合は、あえて太めの糸や色の異なる糸を選ぶのもオススメです。刺繍や飾り縫いの場合は、色や素材にこだわった特殊糸が良いですよ。
作品のイメージにあった糸を探しましょう。
4.信頼できるメーカーを選ぶ
品質の安定した糸を使うことは、トラブルのない快適な縫製作業の基本です。安価な糸は、太さにムラがあったり、繊維の質が悪かったりして、縫製中の糸切れや縫い目の乱れの原因となることがあります。長年の実績がある、信頼できるメーカーの糸を選ぶのがオススメです。
有名メーカーの糸は強度が安定し、糸切れが少なく、均一な縫い目を作ることができます。また色落ちや色褪せも少なく、洗濯にも強いため、美しい状態を長く保てるのもポイント。
特にデリケートな生地や高価な布地を使用する場合は、品質の良い糸を選びましょう。
ミシン糸に関するよくあるトラブルと解決策
ミシン作業中に遭遇する多くのトラブルは、実は糸に関係していることが少なくありません。適切な対処法を知っておくことで、スムーズな縫製作業を実現できます。
代表的な糸のトラブルと、その解決策を見ていきましょう。
1.糸が絡まる場合
糸絡みは、ミシン作業によくたるトラブルのひとつです。糸調子があっていなかったり、糸の太さと針が不適切だったりすると起きることがあります。
トラブルが起きたら、まずは糸調子から見ていきましょう。糸を適切に調整することで、糸が絡まらなくなります。布地の厚さに合わせて上糸と下糸のバランスを取りましょう。
また使用する糸の太さに合わせて、適切な針を選ぶことも大切です。針や糸を交換し、セッティングを見直して、試し縫いをしてみてくださいね。
2.縫い目が不揃いになる場合
縫い目の乱れは見た目だけでなく、縫製の強度にも影響を与えます。布地と糸の組み合わせが適切でないと、上手に縫うことができません。伸縮性のある生地に通常の糸を使用すると、着用時に縫い目が歪んでしまいます。布地の特性に合った適切な糸を選び直しましょう。
また古くなって劣化した糸を使用している場合も、縫い目が不揃いになりやすくなります。糸自体は新しくても、保管状態が悪かったり、購入から長い期間が経過したりした糸は、品質が低下しているかもしれません。
新しい糸に交換し、試し縫いしてください。どうしても縫い目がそろわないときは、ミシンの故障かもしれませ。早めに専門店へ持ち込んで、見てもらいましょう。
3.糸が切れる場合
頻繁に糸切れすると、作業効率を大きく低下させます。そのたびに作業が中断して、ストレスもたまりますよね。糸が切れる原因には、針の摩耗や糸の張力が強すぎるケースが考えられます。
また、古くなって劣化した糸や、安価で品質の悪い糸を使用している場合も、切れやすくなります。
まず針の状態をチェックし、必要に応じて新しい針に交換しましょう。それでもだめなら、糸の調子を調整したり、新しいものと交換したりします。
品質の良い新しい糸を使用することで、糸が切れにくくなるはずですよ。
まとめ
ミシン作業をスムーズに進めるためには、布に適した糸選びが重要です。布地の素材や厚さに合わせて適切な糸を選び、ミシン針との相性も考慮することで、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。
新しい作品を始める際は、布地の特性をよく確認し、用途に合った糸を選びましょう。また品質の良い糸を使用し、適切な保管を心がけることも大切です。糸の選び方に迷ったときは、専門店で相談してみましょう。
糸を適切に保管し、試し縫いを繰り返しながら、裁縫ライフを楽しんでくださいね。